Aikido yuishinkai
合氣道唯心会
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丸 山 先 生 の 旅 日 記

オーストラリア・ニュージーランド
合氣道セミナー記



ブリスベーン

 10月3日 秋晴れ爽やか
   私と妻(恭子)は、成田国際空港より、オーストラリアへ向けて旅立つ。夜9時40分発JALで翌朝
  7時20分(日本時間6時20分)ブリスベーン空港に到着。時差1時間なのでいわゆる時差ボケは感
  じない。
   空港には合氣道唯心会国際師範部長のマイケル・ウイリアムス9段を初め、数多くの指導者の方々
  がこぼれるばかりの笑顔で出迎えてくれた。空港から1時間、ブリスベーン市郊外のロド・ニクソン・
  スミス氏の家に旅装を解く。風水にのっとって作られた家で、プール付きの豪壮な邸宅である。

   スミス氏は、カンタス航空に長年お勤めで今年停年を迎えられる。私は毎年オーストラリアを訪れて
  いるが、スミス氏のご配慮でいつも航空機は、エコノミークラスのチケットでビジネスクラスに乗せて
  頂いている。
   私共夫妻の他、マイケル・ウイリアムス氏もスミス氏の家に宿泊する。ウイリアム氏は去年暮れに
  住みなれたバイロン・ベイの家を売られて、現在フィジーに住んでおられる。
   その晩、フィジーから奥様のバレリーさんも駆けつけ、ご一緒に宿泊されることになる。
  
 10月5日 
   
この日は、私の70歳の誕生日であるとともに、奇しくもウイリアムス氏の誕生日でもある。
  会主と国際師範部長の誕生日。ブリスベーンでこの日を迎えることが出来たことに当地の指導者、
  会員一同、この様な栄誉はないと大喜び。当日は、朝から多勢の会員の方々とブリスベーン河を
  遡ぼるリバークルーズを行う。

   ゆったりと大河を遡るボート。緑豊かな両岸には今を盛りと紫色のナジャランダの花が木々を色ど
  っている。これは日本の桜花と思ってよい。ピンクの桜が紫になったと想像して頂きたい。この花が
  吹雪となってブリスベーン河に散る様は、目を瞠るものがある。
   そう、今オーストラリアは春まっ盛りなのでだ。新緑は目に優しく、暖かな春風は優しくデッキにも
  たれる私の頬を撫でる。


   1時間程でコアラ・サンクチュアリーに到着。
   此処は1985年に私が初めてオーストラリアを訪れた際、尋ねた場所である。正に21年振りの
  訪問と云えよう。当時と同じく、カンガルー、コアラ達が私たちを迎えてくれた。なかに、年老いた
  カンガルーが居て「おお!久し振りだな」と再会を喜んでくれた?

   その夜、なつかしいグリフス大学で6時半から9時迄合氣道のセミナーを行う。これからオースト
  ラリア各地をまわるというのに、シドニー、バイロン・ベイ、メルボルン、キャンベラ、アドレイド、果て
  は、イギリス、ニュージランドから迄会員が続々詰め掛けている。
   皆いわいる「追っかけ?」というものか。参加者60名程で、大学の道場は超満員。人数制限をした
  とのことである。

   欧州の時と同じく。大東流、後頭の目、一体感、丹田と心字の関係等々教授する。
   稽古後、びっくりするような大きなバースデー・ケーキが二つ、道場のど真ん中にドーンと置かれ、
  ウイリアムス氏と一つずつ入刀する。皆から誕生祝を沢山頂き、これからの旅の重量が心配になる。
  (贅沢な悩み・・・?)。


 10月6日
   
朝からブリスベーン市内見物。会員20人がお供でついてくる。まるで大名行列で、流石のブリス
  ベーンっ子も目をみはっていた。昼食もコーヒー・ショップもほとんど貸切状態。
  
   夜は6時半から9時迄セミナー。
   大東流、後技を主に行う。我が合氣道唯心会では、関西地区本部代表の岡嶋泰樹師範が元大
  東流六方会関西地区本部長であった関係で、大東流の技と合氣道の技を合わせて、合氣道唯心
  会の技として教えている。

   事実、どんなに力を抜けと教えても、大力で抑えつけてこちらの技を試してくるのが白人の方々の
  癖で、特に私は誰でもどんな流派でもウエルカムと云っているので、なかには120キロ、2メートル
  という巨漢が私を仰向けに寝かせて馬乗りになって、首を絞めつけ「どうする?」。それを難なく投げ
  ると、今度は私の寝ている両足首、両腕を3人がかりでおさえつけてくる。
 
   これは正に大東流の技が最適である。あるいは、立っている私の片腕を3人がかりで強烈な力で
  おさえつけてくる。他流派の人々で「氣って何だ?とも角、投げてくれ」とくるのだから、目に物見せ
  ないと納得しない。

   70歳の私が100キロ以上の20代、30代の巨漢を投げるのだから、皆がその場で唯心会の会員
  になってしまう。
   外国にいくとよく聞かれるのが、今後どうやって唯心会を拡げるのかという質問で、私はいつもそれ
  に対して「拡げる氣は無い。日本の諺に桃季言わざれども下自(おのず)から蹊(みち)を成す。とい
  う言葉がある。私は私の心技をより深く掘り下げるのみである。」と答えている。

   現に私は、毎早朝に起きて自ら課した朝練を欠かしたことはない。これは旅行中と云えども同じで
  何処の国、何処の家に泊まっても、皆「先生の寝室はこちら。先生のトレーニング・ルームはこちら
  に用意しました」と云ってくれる。
   故に、同じ家に何人泊まっても、朝シャワーを浴びるのは私が一番である。

 10月7日
   土曜日、休日のため、朝9時半から12時、午後1時から3時半までセミナーを行う。
   ここに珍客が突然現れた。20年以上前に私が慶応大学で合氣道を教えた田淵氏が来られたので
  ある。齢50になられたという氏は、ブリスベーン市内にお住まいを持ち、オーストラリアの物品を日本
  で販売なさっているとのこと。何とTシャツを70枚もお持ちになり、背にはオーストラリア・ニュージラ
  ンドツアー2006と印され、合氣道唯心会と私の名が真ん中にはシンボルマークの「心」の字がある。

   これを寄付致しますとのこと。これには感謝感謝であった。早速、オーストラリア合氣道唯心会で
  販売し、そのお金は、オーストラリアの会に収めることにする。「限定販売だ!」というウイリアムス
  の叫びにもかかわらず、あっという間に売り切れてしまった。

   その夜は大学のキャンパス・クラブで私達の誕生祝いも兼ねたパーティが開かれた。
   多くの会員の方々がご主人あるいは奥様同伴で参加され、ピアノ演奏やタンゴダンスに打ち興じ
  られていた。昼間の稽古衣姿とは、打って変わった紳士淑女振りに思わず見とれてしまった。

  テラスから庭に、シャンパングラスを片手に出てみれば、満天の星。南十字星がキラキラと輝き、
  振りかえれば、私の肩にそっと手を添える金髪の美女。正に夢の世界であった。
  
 10月8日
   日曜日。スミス氏の家から大学まで1時間かかるところを30分で着いてしまった。
   今日はブリスベーンでのセミナー最終日。
   午前中は短刀取り。鎧組打ちで組み敷かれた状態から上の相手をはねのけ、相手の首をかく技は
  大受けをして、皆子供のようにころがりまわって喜んでいた。
  

   午後は、欧州の時と同じく、陰陽の剣、春秋の剣、四季の剣、そして新陰流三学圓の太刀を教える。
  外国の方は、さむらいに憧れているだけあって剣の型が大好きである。
   しかし、宮本武蔵も上泉伊勢守、千葉周作等々名高たる剣客が1メートル80センチもあったと聞くが
  この人達は皆2メートル近い。こうゆう人々が当時さむらいだったら、さぞ脅威だったろうと思った。
  事実、元軍人や現コマンドーとして、多くは語らぬが何人もの人を殺した経験をお持ちの方々がいる。
  この人々は、特にナイフ使いには抜群の腕を誇っている。
   生死の境を越えたこの人々に対し、良い加減な技は教えられない。教える私も真剣にならざるを得
  ない外国でのセミナーである。

  
「教えることは教わること」と云った先人がいたが、正に実感である。